「ぼく、ドラえもん」が売れているらしい。ウェブマスターもご多分に漏れずきっちりと購入した。あまつさえ、全巻収納BOXも入手する念の入れようだ。雑誌の内容自体はたいしたことないが、別冊付録の単行本未収録漫画がコレクター魂を十二分に挑発している。
ドラえもんは藤子作品の代表だが、微妙に他の作品と性格を異にしている。それは、のび太が弱虫である点だ。他の作品の主人公は、程度の差こそあれ駄目人間であることが多いが、弱虫ではない。ガキ大将に反撃するシーンは多く見られるし、そもそもいじめられっ子ではない主人公が意外に多い。つまりドラえもんに出てくる普通の少年のような、のび太ほど積極的にいじめられる立場ではないが、ジャイアンには逆らえないというポジションの少年が大多数だ。
逆に、ドラえもんほど父性や母性を持ったパートナーがいないからこそ、そこまでの駄目人間には出来なかった、という見方も出来るが。

以前に書いたと思うが、ウェブマスターが一番好きな藤子作品は「タイムパトロールぼん」だ。藤子氏持ち前のSFマインドと清潔感あふれる絵柄が一番マッチしていて、学習漫画のような内容にもかかわらず文句なしに面白いところなど、、氏の作品の中でも最高傑作なのではないかと思っている。
藤子氏の作品は、あの世代の漫画家の例に漏れず膨大だ。ドラえもんに限らず、これをきちんと整理する作業というのは出版的にも非常に重要なことなのではないかと思っている。
藤子不二夫ランドは古本屋で見かけても胸が悪くなるだけ(誰が1冊何千円も出すというのだおる?)だし、中央公論社が積極的に総集編を出していたようだが、内容の改編や勝手な編集が目立つため「風呂で読みたいから押さえておくか」程度の用にしか使えない。前述のタイムパトロールぼんなど、未収録エピソードを掲載するどころか第2部をばっさりとカットして「総集編」と銘打っているのだから呆れるばかりだ。
小学館もちと微妙で、「パーマン」など改編を繰り返しているため、パーマン5号(あの赤ちゃんパーマンだ)の存在が都市伝説化している。アニメ化などの際に色々問題が発生するのはわかるが、すでに出版されているものを再編集するのは出版者としてどうかと思う。作者はすでに故人なのだから。(スーパーマン→バードマン、クルクルパーにする→動物にする、などの話は質が異なる問題だし、作者存命の頃の話なのでここでは触れるつもりはない。ただ、一部の単行本を見た時に、表現が直しきれてないものがあったのは笑わせてもらった、とだけ書いておく)

そういう意味で、この「ぼく、ドラえもん」が売れて、大人が藤子氏の作品を読みたいなあ、と思うような風潮が出来るのをウェブマスターは歓迎する。今回の「ぼく、ドラえもん」は明らかに子供向けの出版携帯ではないが、多少の拝金主義になろうとあの膨大な作品をきちんと継続的に管理してくれる存在というのはやはり必要なのではないかと思うからだ。